こんばんは。
先日下記の記事でダムの魅力について述べました。
この記事の中で、ダムの背景、歴史が面白いという話をしましたが、
今回はそれに関連してダムの沈んだ村についてまとめてみました。
全国には数多くのダムが建設されていますが、その一方で建設によって沈んだ村も数多く存在します。これらを専門とするダムマニアもいるくらい、奥が深い世界です。
これによってダムの要否を問うわけではなく、あくまでも事実として受けてめていただければと思います。
【関東を支える】宮ケ瀬ダム
日本最大級のダムの一つ、神奈川県相模原周辺にある宮ケ瀬ダム。
堤高(ダムの高さ)、総貯水容量(ダムにためることのできる水の量)ともに関東屈指の規模を誇り、重力式コンクリート型のモンスター級のダムです。
そのような規模の大きいダムであるにもかかわらず、市街地から割と近いところに建設されています。ダムの底へと沈んだ集落は300戸ととても多く、その中には学校も含まれていました。
このダムは着工が1979年、竣工が2000年と建設に21年もの歳月を費やしているのですが、その原因は、ダムの底へ沈む村に対する補償の交渉が難航したためであるといわれています。
結果として補償内容としては、代替造成地やその他公共施設の建設に落ち着き、移転をした人数は1200名程度となりました。
以下の図は現在の宮ケ瀬ダムの新旧を比較したものになるのですが、ダム建設前に集落が存在していたことがはっきりと読み取れます。
巷では観光スポットとして大人気の宮ケ瀬ダムですが、こういった一面も知っておくと宮ケ瀬ダムの新たな側面を知り、より楽しむことがができるかもしれません。
【日本最大のロックフィル】徳山ダム
岐阜県にある、日本最大級のロックフィルダムである、徳山ダム。
流域面積(ダム湖の大きさ)が半端ではなく、ダムによって沈んだ面積もとてつもなく大きいです。
このダムの建設により、1970年には1500人程度の人口を誇った徳山村はダム建設によって廃村となりました。旧徳山村民の意見により、ダム湖は徳山湖と命名されています。
村が丸ごとダムに沈むというという事実に徳山村民が黙っているはずもなく、ダムを建設したい自治体側とそれを防ぎたい村民の間で激しい争いが繰り広げられました。
1971年にダムの建設が計画されてから12年後の1983年に村ごと集団移転することを条件として住民と合意しました。その後、2008年にダムが竣工し、完成まで実に37年もの月日が費やされています。
以下が新旧の比較です。徳山村が完全にダムの底に沈んでしまったのが見て取れます。
この事件も一つのきっかけとなり、ダムの必要性について全国的に論争が起きるなど、話題の多いダムでもあります。
【四国のいのち】早明浦ダム
「四国のいのち」ともいわれる、早明浦ダム。
高知県にある四国地方最大のダムで、重力式コンクリート型です。
四国のいのちといわれる由縁は、ためられた水が四国4県すべてで利用されており、四国の水運用のかなめとなっているからです。
夏の時期にはたびたび渇水になりニュースで取り上げられるらしく、四国地方に住む方なら絶対に知っておきたいダムです。
そんな早明浦ダムですが、当初はその上流と下流にもダムが作られる予定であったため、今の半分規模のダムとなる予定でした。しかし、そのどちらも計画が中止になってしまったため、結果として早明浦ダムの規模を倍にせざるを得なくなり、それに比例する形で水没するエリアが広くなってしまいました。
特にダム湖の上流に存在する大川村は、村の集落の大部分が水没してしまうにも関わらず、ダムはさらに下流に建設されるため、固定資産税が全く入らない(長期的な収入が全くない)という事態に陥りました。村が沈むというデメリットがあるにも関わらず、ダム建設によって得られる税金は他の市町村にとられるということで、村全体を挙げて反対運動が行われました。
ダムの建設が決まっているにも関わらず、沈むエリアに村役場をあえて新設することで抵抗感を示したともいわれています。
そんな早明浦ダムですが、1963年に着手、75年には竣工しています。着手から竣工までスムーズに進んだのは先の二つよりも時代が古いからでしょうか。
現在でもダムが渇水になると旧大川村役場が現れ、ニュースでたびたび登場するようで、それを見ると四国地方の人はそろそろやばいな、と感じるようです。
【日本一有名】黒部ダム
ダムへの興味が0%の人でも知っているであろう、日本で1番有名な黒部ダム。
このダムはあまりにも山奥でほとんど人の住んでいない場所で建設されたため、村が沈んだという情報は出てきませんでした。
沈んだ村というよりも建設までの経緯の過酷さが有名なダムですね。その経緯は、ドラマ化、映画化もされています。
まとめ
このほかにもたくさん存在しますが、今回はひとまず有名なダム3選を取り上げて紹介しました。
基本的にダム湖に沈む村が大規模になればなるほど、地元住民との交渉が難航し建設期間が長くなる傾向があります。自分が生まれもった土地を離れればならないため交渉が長引くのは必然だと思います。
さらに、ダム建設によって沈む地域ではなくその下流地域が恩恵を受けるのがこの問題をより複雑にしています。
この問題の度にダム建設の賛否が議論されますが、これに関しては結果論による部分も多いため、答えのない問題だと私は思います。
すでに建設されてしまった以上、沈んだ村のことを風化させないようにしつつ、ダムの役割に感謝しながらダム巡りを行うのが正解なのではないかと思います。
以上!
- 参考
各ダムのwikipediaのページ
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